ヒエロぐり

DTMer hieroglyph が綴る作曲記

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幸せの音(マインドアサシン「幸福者」より)

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幸せなら手をたたこう」という歌詞がありますが、「幸せの音」って聞いてすぐに何か音が思い浮かびますか?

 

僕は思い浮かびます。「カシャカシャ」。

 

さて、何の音でしょう? 

・・・・・

 

頭に手を触れるだけでその人の記憶を破壊できるという精神科医「かずい」が主人公の「マインドアサシン」というマンガが、かつて週刊少年ジャンプで連載されていました。

 

「幸せ」について考えるとき、マインドアサシン7話「幸福者」が思い浮かぶのです。

 

「幸福者」がどんなお話かというと-

 

かずいの病院に一人の男が怒鳴り込んでくる。

男曰く「寝たきりになった妻を元に戻せ!」

 

かずいは男に言う。

「あなたの奥さんは望んで寝たきりになったのです。奥さんと結婚した後、会社をクビになったあなたは、毎日酒を飲み奥さんに手を挙げるなど人が変わってしまった。奥さんはそれでもあなたを愛していて、別れることも死ぬことも出来ず、自分の記憶を破壊してくれとこの病院に来たのです。そうすれば夫が昔の夫に戻るかもしれないから」と。

 

男は驚き悲しみ、回復のすべはないかと聞くが、いったん破壊した記憶は戻らないとかずいは言う。

 

もし可能性があるとすれば、奥さんが体験した強烈な出来事とか、一番心に残った出来事とかを繰り返せば何かしら反応があるかもしれない。

 

男は心を入れ替え、仕事をはじめ、毎日奥さんに語りかける。新婚旅行で一緒に行った場所のことを語ったり、初めてあげた指輪を指にはめてあげたり。

 

しかし奥さんは反応を示さない。

 

5年が過ぎた。

 

相変わらず男は奥さんに語りかける。しかし奥さんは何の反応も示さない。

 

ある日、男を見かねた会社の同僚が飲みに行かないかとスナックのマッチを差し出す。

男はその申し出を断り、家に帰る。

 

家について、男はそのスナックのマッチを見る。

 

ずいぶんタバコを吸っていないな、と男は思う。そして奥さんに語りかける。

 

「そういや昔よくおまえに聞かれたっけ。なんでライター使わないのって」       

 

「カシャカシャ」男はマッチを軽く振る。

 

「昔あこがれていた俳優が映画の中でやっていたのマネしてたんだ。おまえの前で一生懸命かっこつけてたんだぜ」

 

「もう使わないけど」

 

 

 

・・・・・・・・「たばこ、やめたの?」奥さんが目を覚ます。

 

―という話。

 

この後に「結局彼女の記憶を取り戻したのはお互いに幸せを感じていた時の何でもない小さな音でした」とかずいが言うセリフがあるのですが、本当の幸せとは、特別な出来事や特別な何かではなく、身近な出来事のささいな一コマなんだ―ということを感じられる、個人的にとても好きな話です。

 

もちろん幸せのカタチはさまざまあり、「本当の幸せとは身近な出来事のささいな一コマだ」などと押し付けるつもりは毛頭ございませんが、ゆっくりと12月の明かりが灯り始めて(by B'z)、ちょっとおセンチになるこの時期に、「幸せ」について考えるのもよいのではないでしょうか。

 

カシャカシャ。